須藤祐太郎さんの美術作品としての文庫本、第二弾。
大学で彫刻を専攻し、金属彫刻に取り組んでいた須藤さんが、体調や精神の変化をきっかけに、特別な設備や素材、コンセプトを必要とした“非日常的”な美術に疑問を持ち、身の回りの既成品を用いて、数年間にわたる日記/回想としての作品を制作したのが、前作
Obsessive Flowers。
今回の「七遺」は、その方式をさらに進めて、1年間に制作した四季に関連した作品の写真と、制作するために出向いた様々な場所やメモ、制作ノートなどを多数収録しています。
といってもメイキングものや資料集ではなく、随時アーティストが発見したもの考えたことが集積された感じで、そのすべてが本というメディアに封じ込められた作品となっていて、制作をつぶさに覗き見るような感じです。
(作家のインスタグラムより)
「作品たちは、流れた日々のレプリカです。コピーというよりも、レプリカと表現したい。それらは時間差で生まれるなと、といつも思います。何年もの月日が経ち、何か形にすることで、ようやく区切りをつけようと試みることができるる。オブジェ、写真、文章たちは、追憶による価値が付与されてた、きらきら光るガラクタであってほしい。てきとうに拾った貝殻は、どんなに美しくてもただの貝殻ですが、思い出のゲームセンターでとったプラスチック製の貝殻は、たとえ大量清算された模造品だとしても、替えのきかない宝物になります。これは、制作でも大切にしている部分であると同時に大きな力(我々を呑み込もうとする、ハリケーンのような渦)への抗いでもあります」
「内面の話をすると攻撃されやすい世の中ですが、何かを作り続け、傷ついた他者と前向きな関係性を築くためには、個人的な(出来れば真摯な)告白を続ける勇気が必要だと考えます」
文庫サイズ246pages 補遺ペーパーつき
2023.7