日本赤軍メンバーとして革命の世界に身を投じた足立正生監督。97年、ベイルートの各地のアジトにいた日本赤軍のメンバーたちと同時期に逮捕されたが、その中には、『リッダ空港事件』の生き残りでアラブの英雄・岡本公三もいた。英雄でありながら日本からは引き渡しを求められている大物を、そうとは知らずに逮捕してしまい処遇に困る当局と、言動いかんによっては運命が一変してしまうメンバーたちのスポークスマンとしてスリリングなやりとりを担い、長期のムショ暮らしを送る事になった監督。
　マッサージや整体を心得ていたため、囚人に施術し、ドクトルと呼ばれ、ときには密造酒を振る舞われるという、意外に平穏かつヘルシーな生活を送りつつ、牢名主とその腰巾着たち、成金知能犯、凶悪犯、しょうもないヤクザ者など様々な囚人を観察し、アラブ人気質を考察。
　しかし、囚人が過密に詰め込まれ食事も日に一回で身内の差し入れが文字通りの命綱という状態に加えて、陰湿で残酷な公開拷問に囚人の怒りは爆発！　一斉蜂起に。フランス革命のように、パンを求めて？人間の尊厳を求めて、腹の座った悪人たちが見事に人心を掌握し、監督も日本赤軍で培ったノウハウを生かしてブレーンの一人として、改善要求を掲げ、クレバーに戦いにます。
　服役が長引き、国外追放の可能性が出てきた、監督は逮捕前から交際していた現地女性オマイヤさんと獄中結婚に踏み切り、神と囚人たちに祝福されて式を挙げ、ほどなく日本に強制送還されます。
　塀の中の機微だけでなく、逮捕戦後の日本赤軍のこと、アラブ社会のこと、大小公私にわたる様々な事柄が詰まった3年に及ぶ獄中記です。
四六判上製 536P