美大でデザインを専攻していた東野大地と、ダダイズムの研究をしていた山本桜子は、
福岡を拠点に活動する革命家・外山恒一率いるアナキスト×ファシスト党「我々団」の党員となり、
芸術を取り巻く腐敗した社会に疑問を抱き、活動家に転じる。
表現の自由の正義に担保された活動をブルドーザーで踏みにじるごとく破壊する決意をし、
地域おこし的なアートイベントに応募しては、内側から揺さぶりをかける
アートなテロ行為?を試みるのであるが、うっかり素性をバラして自爆したり、
予想外な展開に自身も翻弄されてのトライ&エラーを繰り返すのだった。(←ここまでが前号)
今回は、折しもダダ100周年で様々なイベントが催された2016年。
ダダ発祥の地チューリッヒのあるスイス大使館も数々のイベントを企画し、その一貫で発行した
ダダ新聞を山本がゲット。
そこに、スイス旅行が副賞のアートコンペをみつけた!
締切がせまる中、山本は外山恒一の選挙パフォーマンスのドキュメンタリーを制作中の
織田曜一郎(革命家でもダダイストでもないジャーナリスト)を無意味にスイスに送り出すべく、
応募を勧め、サポートに奮闘する。
都知事選の中、なんちゃって選挙カーに乗り込み、投票率0を呼びかけ、
候補者でもないのに選挙運動に奔走する外山の様子を撮影した映像は無事にエントリーし、
永世中立国のスイスに戦いを挑むとともに、他の応募作品とSNS上での“いいね”の得票数で競い合うことになる。
やがて勝負は、友人知人に呼びかけて票を投じた、織田による九州ファシスト党の選挙活動ドキュメンタリー
「外山恒一の「ニセ選挙運動」〜現代美術パフォーマンスとしての記録〜」と、
同様にSNSなどで応援を要請してこれを猛追する、スイスに行きたい東大生ユニット「つらつら」の一騎打ちに!!
そして、戦いの背景には、ファシストを名乗る団体の映像が、
主催コンペで票数をのばす事態に困惑しつつも、
フェアでオープンであるために政治思想を理由に作品を除外する検閲行為をせず、
大人な対応でなんとかしようとするスイス大使館が…。
この三つ巴の狂想曲は、本人たちにも予期しなかった織田の優勝、ドイツ文化センターでの授賞式で幕を閉じる。
授賞式で三者が一堂に会して、かわされた会話(九州ファシスト党員たちに釘をさしまくるスイスの文化/
広報担当者と安心させようと活動の説明をして余計に訝しがれる党員たち…)など、
最後までどこかドタバタコメディのような、アートと革命の記録になっています。
A5判136pages